アンデルセン

ある語り手の生涯

みにくいアヒルの子,人魚姫たちの中に投影される,作者の内面の真実をあざやかに描いた評伝の決定版.

アンデルセン
著者 ジャッキー・ヴォルシュレガー , 安達 まみ
ジャンル 書籍 > 単行本 > 伝記
刊行日 2005/03/18
ISBN 9784000220279
Cコード 0023
体裁 A5 ・ 上製 ・ カバー ・ 424頁
在庫 品切れ
童話作家として永遠の敬愛を得る一方,同性への強い思慕といった一面が興味本位で伝えられることの多かったアンデルセン(1805―75).この評伝では,日記,書簡,同時代のさまざまな証言をも駆使し,みにくいアヒルの子,マッチ売りの少女,人魚姫たちのなかに投影される,作者自身の内面の真実をあざやかに描き出す.


■内容紹介
 著者ヴォルシュレガーが指摘するとおり,日記や書簡や同時代の証言から浮かびあがるアンデルセンの真の姿は,センティメンタルに装飾された自伝や自伝的な小説ではなく,むしろ一見朴訥な語り口のおとぎ話のなかに投影されている.アンデルセンは,最初のうち,民話やドイツのロマン主義作家らの先行作品に基づいたおとぎ話を書いていたが,やがて独自の主題や文体を手にいれて,創作おとぎ話を世に送りだすにいたる.おとぎ話は細密画風の世界を描くのを得意とするアンデルセンにぴったりの媒体であり,同時にさまざまな自画像を描くきっかけともなった.「あの女はろくでなし」の主人公の老女には,不遇な女性をゆえなくさげすむ社会への義憤をこめて,苦労の多かった母のおもかげを重ね,「モミの木」では,現実を受けいれずに幻想のなかに生き,目の前の幸せを取り逃がしてしまうモミの木に,一箇所にとどまらず,旅にでては夢を追い求めつづけた自分自身を映しだした.最晩年に書かれたリアリズムと幻想が交錯する「歯痛おばさん」には,実際にひどい歯痛に苦しめられた自分の姿を描きこんだ.傑作「影」では,影に自分のアイデンティティを奪われて追いつめられていく学者の姿に,公のペルソナに乗っ取られる作者たる自分の姿を重ね,読者を戦慄させた.そして「人魚姫」では,かなわぬ恋の代償として魂の永遠性をえる主人公に,偏狭な社会からはじきだされたアウトサイダーたる自分の挫折と,自作の芸術性へのしたたかな自負を垣間見せる.…
 …2005年はアンデルセン生誕200年に当たる.この機に,アンデルセンそのひとがふたたび脚光を浴び,その作品が見直されることになるなら,このうえない喜びである.
(「訳者あとがき」より)
序章 生涯の物語

第1章 田園

第2章 若き喜劇役者殿

第3章 都会

第4章 学校のアラジン

第5章 幻想

第6章 わたしの時間は心のもの

第7章 イタリア

第8章 最初のおとぎ話

第9章 刃を踏んで

第10章 詩人,それはわたしです!

第11章 イェニー

第12章 王侯の詩人

第13章 影

第14章 ロンドンの寵児

第15章 戦時中

第16章 ディケンズ

第17章 詩神の口づけ

第18章 大いなる生への愛
ジャッキー・ヴォルシュレガー(Jackie Wullschlager)
1962年生まれ.オクスフォード大学ユニヴァシティ・コレッジ卒業.文芸・美術評論家.『フィナンシャル・タイムズ』文芸・美術部主席記者.著書に,ルイス・キャロルらの評伝『不思議の国をつくる』など.

書評情報

朝日新聞(朝刊) 2005年12月10日
日本経済新聞(朝刊) 2005年5月1日
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