チャーチル

不屈の指導者の肖像

彼が大英帝国に託したもの.人々がその男に夢想したもの.英雄,国家,市民,三者が栄光をわかち合った日々.

チャーチル
著者 ジョン・キーガン , 富山 太佳夫
ジャンル 書籍 > 単行本 > 伝記
刊行日 2015/08/25
ISBN 9784000238878
Cコード 0023
体裁 四六 ・ 上製 ・ 232頁
在庫 品切れ
大英帝国崩壊の危機の時代に強力なリーダーシップを発揮し,国民を勝利に導いた英雄=政治家チャーチル.彼が大英帝国に託したものは何だったのか,人々がチャーチルに夢想したものは何だったのか? チャーチルと大英帝国とその国民,三者の友愛に満ちつつも緊迫した関係を,20世紀の世界史のなかに読み解く,あらたな歴史書の提示.


■編集部からのメッセージ
 「我々は自らの義務に立ち向かい,大英帝国と英国連邦が一千年存続したあかつきには,「これこそが最高の時だったのだ」と人々が言えるように振る舞おうではありませんか.」
 チャーチル(Winston Leonard Spencer Churchill,1874~1965)――イギリスひいては世界の危機の時代に強力なリーダーシップを発揮し,母国を勝利へと導いた英雄.選挙で自らを表すときにも,戦中に国民に誇りを取り戻し鼓舞し,イギリスに栄光を輝かせるときにも,そして戦後に来る冷戦時代を「鉄のカーテン」と示唆し規定するときにも,その名演説こそがチャーチルの名前を歴史に刻むものであり,言葉こそ彼の唯一の武器でした.
 チャーチルは1874年,19世紀大英帝国の栄光を体現した女王ヴィクトリアの治世下,保守党政治家の長男として名門貴族の家に生まれました.陸軍入隊,従軍記者などを経て1900年,26歳のときに政界に入ります.その生涯を通じて文筆家,歴史家として執筆活動が盛んで,第一次,第二次世界大戦についてそれぞれ歴史書を著し,1953年には「第二次大戦回顧録」でノーベル文学賞を受賞しました.
 本書では,成績不良で士官学校の受験に失敗する幼少期から,歴史に対する関心と歴史への絶大な信頼から形成される国家像,歴史書や文学から蓄積される言語表現力,友人や側近をもたない希薄な人間関係など,英雄,政治家,名文家といったこれまでの一側面からのアプローチを覆し,複合的な視点から人間チャーチルに迫ります.
 チャーチルとイギリスとその国民.愛憎といっても過言ではないこの三者の緊迫した関係性こそが,刹那的に奇跡のバランスを保持してあの戦火を越え,現在にまで続くイギリスの栄光を引き継いでいると言えます.時代が要請した英雄だったのでしょうか? 国民は何を彼に投影していたのでしょうか? 新たな人間像,国家像,歴史観を提示しつつ,読み物としても応えうる一冊です.
 「これは皆さんの勝利です……長きにわたった歳月も,危険も,敵の恐るべき攻撃も,イギリス国民の自立した決断力を断じて弱めることはありませんでした.皆さんに,神の祝福を!」
第1章 チャーチルと歴史
第2章 家族と青年時代
第3章 陸軍 1894 ― 1900年
第4章 議会 1900 ― 1910年
第5章 中核の時代 1910 ― 1915年
第6章 戦争と平和 1915 ― 1932年
第7章 戦争の到来 1933 ― 1940年
第8章 ひとりきりの首相 1940 ― 1941年
第9章 ビッグ・スリー 1941 ― 1945年
第10章 神格化

参照文献

訳者あとがき――伝記の文化とは
ジョン・キーガン(John Keegan)
1934年イギリス生まれ.英国軍事史研究家,王立文学協会特別会員.著書にThe First World War ほか多数.邦訳では『戦いの世界史』(共著,原書房),『戦争と人間の歴史』(刀水書房)など.2012年逝去.

富山 太佳夫(とみやま たかお)
1947年鳥取県生まれ.青山学院大学文学部教授(イギリス小説,イギリス文化史,批評理論).著訳書に『シャーロック・ホームズの世紀末』(青土社),スーザン・ソンタグ『隠喩としての病い エイズとその隠喩』(みすず書房)ほか多数.

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2015年10月11日
ページトップへ戻る