建築から都市を,都市から建築を考える

変貌する都市のなかで,滅びないものとは何か.歴史と対話を重ねたマスター・アーキテクトが,いま伝えたいこと.

建築から都市を,都市から建築を考える
著者 槇 文彦 , 松隈 洋 聞き手
ジャンル 書籍 > 単行本 > 芸術
書籍 > 自然科学書
刊行日 2015/10/14
ISBN 9784000610759
Cコード 0052
体裁 四六 ・ 上製 ・ 174頁
定価 2,090円
在庫 在庫あり
〈時〉こそが建築の審判である――丹下健三,ホセ・ルイ・セルトら先駆者たちの意志を受け継ぎながらも,東京の〈奥〉を訪ね,身近な街並みにひそむ歴史の重なりに目を向けてきた建築家,槇文彦.いまを生きる人間に,本当に必要な〈公共空間〉とはなにか.“都市をつくる建築”を生み出してきた,その半世紀を越える思考の軌跡をふり返る.

■編集部からのメッセージ

2015年は,槇文彦さんが東京で建築設計事務所を立ち上げられてから,ちょうど50年を迎える年です.

 この半世紀のあいだ,東京を始め,日本の都市の風景は様ざまな変化にさらされてきました.本書は,幼少期の建築体験や戦後のアメリカ生活をふくむ自身の半生をふり返りながら,槇さんが,これまでどんなふうに〈建築から都市を,都市から建築を〉考えてきたのか,ゆったりと語っていただいた1冊です.

 ここ数年は,新国立競技場問題のキーパーソンとしても注目を集める槇さん.東京での五輪開催が決定する前の段階で,いち早く計画の問題点を指摘されたのはなぜだったのでしょうか.本書は,その提起の背景にある思想を浮かびあがらせるとともに,これからの時代に求められる「パブリック・スペース」とは一体どんなものなのか,人びとに問いかけるものでもあります.

 身近な街並みにひそむ〈歴史〉,空間が与える〈歓び〉――世界各地で創作を行ない,それぞれの都市の変貌を観察してきた建築家の「忘れがたい情景」には,21世紀を生きていくための示唆が詰まっています.


■ 本文より

建築家の活動範囲は広がっていますし,ある一つの地域に深くかかわり続けることが困難になってきているのも事実です.しかし,建築はコミュニティに一つの場を与える――つまり,一種の刺激,出発点を与えることもできる存在です.そこで人びとが何かを感じて,さらにその建築環境を育てていこうというケースに発展すれば,それは,私たち建築家にとっていちばん幸福なことではないでしょうか.

槇 文彦(まき ふみひこ)
建築家.1928年東京都生まれ.東京大学工学部建築学科卒業,ハーヴァード大学大学院デザイン学部修士課程修了.その後ワシントン大学,ハーヴァード大学,東京大学で教壇に立つ.現在,槇総合計画事務所代表.
主な作品にヒルサイドテラス+ウエスト,岩崎美術館,スパイラル,京都国立近代美術館,幕張メッセ,慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス,風の丘葬斎場,MITメディアラボ,4WTCなど.日本建築学会賞,高松宮殿下記念世界文化賞,プリツカー賞,AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダルほか受賞多数.
著書に『見えがくれする都市』(鹿島出版会),『漂うモダニズム』(左右社),共編著に『応答 漂うモダニズム』(左右社)ほか.
聞き手:松隈 洋(まつくま ひろし)
建築史家,京都工芸繊維大学教授.1957年兵庫県生まれ.京都大学工学部建築学科卒業後,前川國男建築設計事務所に入所.2008年より現職.工学博士.専門は近代建築史.DOCOMOMO Japan代表.前川國男,A. レーモンド,坂倉準三,白井晟一,C. ペリアン,村野藤吾など多くの建築展の企画に携わる.
著書に『近代建築を記憶する』(建築資料研究社),『坂倉準三とはだれか』(王国社),『残すべき建築』(誠文堂新光社)ほか.
 

書評情報

建築技術 2016年2月号
読売新聞(朝刊) 2015年12月27日
サンデー毎日 2015年12月6日号
東京新聞(朝刊) 2015年11月15日
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