経済学は悲しみを分かち合うために

私の原点

経済学は人間の未来のために何をすべきか.財政学の第一人者が自らの人生と思想を振り返りながら問う.

経済学は悲しみを分かち合うために
著者 神野 直彦
ジャンル 書籍 > 単行本 > 社会
刊行日 2018/06/27
ISBN 9784000612777
Cコード 0036
体裁 四六 ・ 並製 ・ カバー ・ 260頁
定価 2,090円
在庫 在庫あり
「お金で買えないものこそ大切にしなさい」.幼き頃の母の教えに導かれ,やがて青年は経済学の道を歩みはじめる――.新自由主義に抗い,人間のための経済を提唱する著者の思想はどのようにして育まれてきたのか.自らの人生,宇沢弘文氏ら偉大な師や友人らとの交流などを振り返りながら,経済学が果たすべき使命を根源から問う.
序章 自分の「生」と「思想」に向き合う

第1章 破局に向かう世界で──経済学はいま
 歴史の「峠」に直面して/失われた三〇年/ヨーロッパ理念の動揺/ポピュリズムの拡散/「悪魔の碾き臼」としての新自由主義/誰のための経済学か

第2章 大切なものはお金では買えない──私の思考の原点
 私にとっての「点」/祖父の生まれ変わりとして/何を大切にするのか──母の教え/偉くならないこと/本に囲まれて/人間と宇宙への探求

第3章 社会を選び取る責任──「知」と格闘するなかで
 東京大学への入学──「動」の時代に/夢と挫折の青春時代/経済学への道/「大学紛争」と真理探究の場/玉野井芳郎先生による経済学への導き/加藤三郎先生の教え/学びと挫折/「闘争」の後に/歴史的責任と知識人

第4章 人が生きる場に真理を求めて──大学を離れて生産の現場へ
 プレゼントされた『人間の條件』/隅谷三喜男先生の生き方に学ぶ/労働の現場に身を置いて/孤独な労働を実感/人間的な労働を求めて/人間としての労働者/労働者の学び合いの場を設置/読書と愛と/出向で知るセールスマンの悲しみ/結婚による新たな歩み/「担雪填井」と「スローライフ」の教え/「点」を失わないための決断

第5章 経済学は何をすべきか──研究者への道
 「学ぶということに遅いということはない」/さまざまな恩師に導かれて/財政学の古典の森へ/研究者仲間との出会いと別れ/財政学を研究する多彩な院生の「塊」/研究を共にし,運命を共にした友/母の病/眼に障害を負って見えてきたもの/財政学研究の苦闘/総合的社会科学としての財政学へ/官房学から財政学へ/なぜ財政社会学なのか/「システム改革」の経済学へ

第6章 人間のための経済学を目指して──学問と社会の連携へ
 研究を政策形成に活かす/地方消費税の実現へ向けて/地方分権改革の意義に向き合う/「機関委任事務」の廃止がもつ意味/「三位一体の改革」の挫折/「参加社会」を目指して/宇沢弘文先生という巨人/コモンズと信州ルネッサンス/二つの「9・11」/果たせなかった宇沢先生からの課題/スウェーデンとの出会い/人間と自然を大切にするスウェーデンの暮らし/社会危機を克服し,財政再建を果たしたスウェーデン/「ラーゴム」と「オムソーリ」の教え/人間のための経済学

終章 悲しみを分かち合うために──経済学の使命
 経済学批判としての研究/学び合う共同体/人間を「愛する能力」を身に付ける/悲しみを分かち合う愛/いま,経済学は人間に向き合っているか/「それで人間は幸福になるのか」

あとがき
神野直彦(じんの なおひこ)
1946年埼玉県生まれ.東京大学経済学部卒業後,1981年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学.現在,日本社会事業大学学長,東京大学名誉教授.財政学.著書に『システム改革の政治経済学』(岩波書店),『「分かち合い」の経済学』(岩波新書),『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア新書),『財政学』(有斐閣),『地域再生の経済学』(中公新書),『「人間国家」への改革──参加保障型の福祉社会をつくる』(NHKブックス)など.

書評情報

月刊 福祉 2018年10月号
環境会議 2018年秋号
月刊 地方自治職員研修 2018年9月号
週刊エコノミスト 2018年8月28日号
AERA 2018年8月27日号
週刊東洋経済 2018年8月25日号
週刊金曜日 2018年8月24日号
毎日新聞(朝刊) 2018年8月5日
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