大手拓次詩集

大手拓次詩集
著者 原 子朗
通し番号 緑133-1
ジャンル 書籍 > 岩波文庫 > 緑(現代日本文学)
日本十進分類 > 文学
刊行日 1991/11/18
ISBN 9784003113318
Cコード 0192
体裁 文庫 ・ 434頁
在庫 品切れ
生と死の交錯する妖しい夢幻世界の実像を,口語自由詩で表現した大手拓次(一八八七‐一九三四).孤独と病魔にさいなまれながら,フランス象徴詩を道標として,詩人は生の証しを詩作に求めた.全作品約二四○○篇から二三二篇を厳選して年代順に配列し,詩人の生涯の営みをうかがえるよう配慮した.散文詩や訳詩も紙幅の許す限り採った.


■内容紹介
 口語自由詩を完成させたのは萩原朔太郎であるといった受け売りの意見を、平気で書いている本も世上には少なくない。朔太郎に先だち、朔太郎にも直接影響を与えた拓次のいち早い口語象徴詩の完成度の高さは、日本の象徴詩史の中においてばかりか、一般詩史の記述の中でも、あるいはまたフランス文学受容史の中でも、殆ど無視されるか、軽視されている。大手拓次は、少なくとも、そうしたマンネリズムのきらいのある詩史や文学史に一石も二石も投じる詩人であることを、何よりも彼の詩自身が物語っていよう。……
「解説」(原子朗)より
◆初期詩篇(明治期)
華奢な秘密/頭のはじの微笑/果物の誕生/ふし眼の美貌/二行の蛇/凋落の祈り/死の絵姿/絵すがた/お前は/水仙のにほい/幽霊さん/くちびる/丁字の花/をののき/剣を持つ愛/香炉の墓場/羊皮の紙/胞衣を着た祈の笛/円柱の主人/運命の脣

◆『藍色の蟇』時代 I (大正前期)
くちなし色の散歩馬車/水の上にをどる女/藍色の蟇/慰安/青銅の丘/砂人形/なまけものの幽霊/蛇の道行/わたしは盲者/女よ/撤水車の小僧たち/象よ歩め/しなびた船/緑の締金――私の愛するリリエンクローンへ/美の遊行者/あゆみ/妖気/陶器の鴉/ちらちら見える死/みどり色の蛇/五月の姉さんへ/くちなし色の車/くさむらよ!/のび上がる無智の希望/雪をのむ馬/転生の歌/野よ立てよ/ふくろふの笛/密猟者/香炉の秋/球形の鬼/走る宮殿/廻廊のほとり/むらがる手/とも寝の丘/木立の相/冬のはじめ/名も知らない女へ/法性のみち/妬心の花嫁/ゆあみする蛇/黄色い馬/銀色のかぶり物/日輪草/足をみがく男/血をくむ柄杓/夜会/『悪の華』の詩人へ/黒い手を迎へよ/暁の香料/母韻の秋

◆『藍色の蟇』時代II(大正後期)
蛙の夜/青い異形の果物/手の色の相/水草の手/リラの香料/ベルガモットの香料/スヰートピーの香料/ナルシサスの香料/小用している月/月下香(Tubreuse)の香料/白薔薇の香料/Jasmin Whiteの香料/香料の墓場/Glycineの香料/ヘリオトロピンの香料/香料のをどり/罪悪の美貌/すみれの葉の香料/をとめのひざ/あをざめた僧形の薔薇の花/白面鬼/温室の亡霊/Tileulの香料/仏蘭西薔薇の香料/盲目の鴉/Wistariaの香料/香料の顔よせ/疾患の僧侶/一人のために万人のために/そだつ焔/木の葉のしげりのなかをゆく僧侶/氷河の馬/ちりぎはのばらの香/木立をめぐる不思議/夏の夜の薔薇/色彩料理/霊の食器/ひびきのなかに住む薔薇よ/赤い幽霊/石竹の香料/日光の靴をはいて/よみがへり
西蔵のちひさな鐘/秋/ふかみゆく秋/マリイ・ロオランサンの杖――マリイ・ロオランサンのある絵を思ひて/四月の顔

◆『藍色の蟇』以降(昭和期)
ペルシヤ薔薇の香料/さかづきをあたへよ/明日を待つ薔薇/昨日の薔薇/ふりつづくかげ/空華/心のなかの風/Nant/春の日の女のゆび/夜の時/昼の時/朝の時/黄色い接吻/煙草の時/かをる四月/五月は裸体である/動物自殺倶楽部/恋人のにほい/腐った月光/死は羽布団のやうに/骸骨は踊る/野を匍ひ歩く耳/陰鬱な羽根をひろげた烏蛇/白布にとりまかれた霊魂/病気の魚/脣の刺/青くいろどられた瞼/はるかに偲ぶこゑ/しろい影/時の香/心を化粧する/青い鐘のひびき/Fantastiqueな卵/水底の嘆きの歌/火を探す/くさむらの裸のうへに/黄金の階段をのぼる蛇/白い言葉/薔薇の讃歌/薔薇はゆれる/梨子の花色のマドモアゼエルへ/手に薔薇は繁けれど/わたしの側には/陶器の玩具/霧にかくされた言葉/風の言葉/ゆふぐれ/冬の夜の蛍/重たい月を荷つた心/言葉は魚のやうに歩く/こゑ/雪色の薔薇/みづのほとりの姿/そよぐ幻影/薔薇の散策

◆散文詩
手箱の嫁入/とび色の歌/枯草の囚人/岡よりくる夏/緑の悪魔/言葉の香気/香水夜話/白い鳥の影を追うて/噴水の上に眠るものの声/霧のなかに蹄を聴く/指の群/日食する燕は明暗へ急ぐ/鋏で切り取つた風景/内部にひらく窓/初めの言葉/病間録――無為の世界の相に就いて/幻は月を刻む

◆文語詩篇
まへがき
序詩/ひとひらの花あるごとく/春の断章/心ふたがれ/白くあれ/ゆふぐれ/水に浮く花/浮べる水草/あをき刃の/死

◆訳詩篇
温雅(カミーユ・モークレール)/湿気ある月(アンリ・バタイユ)/亡霊(シャルル・ボードレール)/夜の歌(ポール・フォル)/踊る蛇(シャルル・ボードレール)/信心(ギュスターブ・フォルク)/秋のはじめ(カール・ブッセ)/河をよぎりて(リヒャルト・デーメル)/「薔薇の連」の一部(レミー・ド・グルモン)/お前はまだ知つてゐるか(リヒャルト・デーメル)/秋(アルベール・サマン)/無限の彫刻(シャルル・ボードレール)/ふくろふ(シャルル・ボードレール)/見事な菊(ライナー・マリア・リルケ)/田舎のワルツ(D・フォン・リリエンクローン)/イカールの嘆息(シャルル・ボードレール)/幻想(シャルル・ボードレール)/憑き人(シャルル・ボードレール)/交通(コレスポンダンス)(シャルル・ボードレール)/信天翁(シャルル・ボードレール)/STANCES(ジョン・モレアス)/異国のにほひ(シャルル・ボードレール)/輪舞歌(ロンド)(ポール・フォル)/ギタンジヤリ(ラビンドラナート・タゴール)/若い女のやうな春(ローラ・ベネット)/幽霊(シャルル・ボードレール)/踊る蛇(シャルル・ボードレール)/美しい船(シャルル・ボードレール)/墓鬼(シャルル・ボードレール)/音楽(シャルル・ボードレール)

 年譜
 解説
ページトップへ戻る