経済原論
マルクスの『資本論』を読み解いた代表的著作.
宇野弘蔵(1897- 1977)は,『資本論』を,精確にかつ批判的に読むことで,社会科学としてのマルクス経済学を構築した.本書は,宇野経済理論の基礎を,その中心部分において集約的に述べた代表的著作.マルクス『資本論』への望みうる最良の手引書であると同時に,いまだマルクス経済学への根本的な問題提起を喚起し続けている内在的批判の書でもある.(解説=伊藤誠)
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著者 宇野 弘蔵
価格 定価(本体 800円 + 税)
判型 文庫判・並製(288頁)
対象 一般・図書館
分類コード C0133
一般 / 文庫本
社会科学(経済・財政・統計)
経済・社会[白]
発行年月日 2016年1月15日
ISBNコード ISBN978-4-00-341512-2
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【内容紹介】
本書は,宇野弘蔵の理論のエッセンスをまとめた著作として,最も広く読まれ,論じられてきました.宇野弘蔵は,マルクスの『資本論』自体を,精確にかつ批判的に読むことで,日本のマルクス主義者の陥る政治的イデオロギーと峻別した社会科学としてのマルクス経済学を樹立しました.宇野理論は,戦後の経済学界,思想界に様々な論争を呼び起こしました.理論と実践の厳密な区別を要求する宇野理論は,従来の社会主義観の見直しを迫ることになりました.本書は,『資本論』によりながら,資本主義の基本原理を解明することで宇野独自の立場を凝縮したスタイルで表明しています.
第一篇「流通論」では,『資本論』で「資本の生産過程」の内部の問題とされた「商品及び貨幣」「貨幣の資本への転化」を,「流通論」のテーマに括り出しています.商品,貨幣,資本それ自体には自律的根拠がなく,生産過程の外部的な流通形態に分類されています.マルクスの生産概念G-W-G(G(ゲルトGeld 貨幣)W(バーレWare 商品)G(貨幣+剰余価値))を,宇野は関係概念に捉え直しています.さらに,商品,貨幣,資本を循環流通させることで成立する資本主義的生産の基点が,「労働力の商品化」にあることが説かれています.第二篇「生産論」では,資本主義は,労働者が自らの労働力を商品化することで生産して得た賃銀により,生活諸資料を買い戻す関係に組み込まれることが指摘されます.諸資料の生産と交換関係には,商品,貨幣による資本の法則性が強制されます.資本は再生産されることを必須の前提とし,再生産のための資本の蓄積は,追加労働力を資本自身が調達し続けることになり,相対的過剰人口を生みます.第三篇「分配論」では,資本家と地主との間の剰余価値の分配が分析されます.資本―利子,土地―地代,労働―賃銀の類型的範式が,根本的に批判されます.最後に,相対的過剰人口の増大を含む資本の蓄積拡大は,過剰な生産,賃銀上昇,利潤の減少,再生産の停滞を生み,必然的に恐慌を発生させると結論されます.
資本主義が暴走している現代こそ,世界と日本の現実を知るために『資本論』の重要性が,一層高まっています.『資本論』を批判的に読み解くことで,資本主義のシステム,論理を明らかにした宇野弘蔵が,今こそ注目されています.
【著者紹介】
宇野弘蔵(1897-1977) 経済学者.1921年東京帝大経済学部卒.大原社会問題研究所入所.ドイツ留学を経て,1924年東北帝大法文学部助教授.1938年,人民戦線事件に連座,起訴・拘留される.1941年東北帝大辞職.1947年東大社会科学研究所教授.宇野のマルクス研究は,社会主義イデオロギーから切り離した学としてのマルクス経済学研究を確立した.『経済原論』は,宇野理論の本質をまとめた代表作.Principles of Political Economyに翻訳され,海外の研究者にも注目された.
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著者 宇野 弘蔵
価格 定価(本体 800円 + 税)
判型 文庫判・並製(288頁)
対象 一般・図書館
分類コード C0133
一般 / 文庫本
社会科学(経済・財政・統計)
経済・社会[白]
発行年月日 2016年1月15日
ISBNコード ISBN978-4-00-341512-2
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【内容紹介】
本書は,宇野弘蔵の理論のエッセンスをまとめた著作として,最も広く読まれ,論じられてきました.宇野弘蔵は,マルクスの『資本論』自体を,精確にかつ批判的に読むことで,日本のマルクス主義者の陥る政治的イデオロギーと峻別した社会科学としてのマルクス経済学を樹立しました.宇野理論は,戦後の経済学界,思想界に様々な論争を呼び起こしました.理論と実践の厳密な区別を要求する宇野理論は,従来の社会主義観の見直しを迫ることになりました.本書は,『資本論』によりながら,資本主義の基本原理を解明することで宇野独自の立場を凝縮したスタイルで表明しています.
第一篇「流通論」では,『資本論』で「資本の生産過程」の内部の問題とされた「商品及び貨幣」「貨幣の資本への転化」を,「流通論」のテーマに括り出しています.商品,貨幣,資本それ自体には自律的根拠がなく,生産過程の外部的な流通形態に分類されています.マルクスの生産概念G-W-G(G(ゲルトGeld 貨幣)W(バーレWare 商品)G(貨幣+剰余価値))を,宇野は関係概念に捉え直しています.さらに,商品,貨幣,資本を循環流通させることで成立する資本主義的生産の基点が,「労働力の商品化」にあることが説かれています.第二篇「生産論」では,資本主義は,労働者が自らの労働力を商品化することで生産して得た賃銀により,生活諸資料を買い戻す関係に組み込まれることが指摘されます.諸資料の生産と交換関係には,商品,貨幣による資本の法則性が強制されます.資本は再生産されることを必須の前提とし,再生産のための資本の蓄積は,追加労働力を資本自身が調達し続けることになり,相対的過剰人口を生みます.第三篇「分配論」では,資本家と地主との間の剰余価値の分配が分析されます.資本―利子,土地―地代,労働―賃銀の類型的範式が,根本的に批判されます.最後に,相対的過剰人口の増大を含む資本の蓄積拡大は,過剰な生産,賃銀上昇,利潤の減少,再生産の停滞を生み,必然的に恐慌を発生させると結論されます.
資本主義が暴走している現代こそ,世界と日本の現実を知るために『資本論』の重要性が,一層高まっています.『資本論』を批判的に読み解くことで,資本主義のシステム,論理を明らかにした宇野弘蔵が,今こそ注目されています.
【著者紹介】
宇野弘蔵(1897-1977) 経済学者.1921年東京帝大経済学部卒.大原社会問題研究所入所.ドイツ留学を経て,1924年東北帝大法文学部助教授.1938年,人民戦線事件に連座,起訴・拘留される.1941年東北帝大辞職.1947年東大社会科学研究所教授.宇野のマルクス研究は,社会主義イデオロギーから切り離した学としてのマルクス経済学研究を確立した.『経済原論』は,宇野理論の本質をまとめた代表作.Principles of Political Economyに翻訳され,海外の研究者にも注目された.
序
序 論
第一篇 流 通 論
第一章 商 品
第二章 貨 幣
第三章 資 本
第二篇 生産論
第一章 資本の生産過程
第一節 労働生産過程
第二節 価値形成増殖過程
第三節 資本家的生産方法の発展
第二章 資本の流通過程
第三章 資本の再生産過程
第一節 単純再生産
第二節 拡張再生産
第三節 社会総資本の再生産過程
第三篇 分 配 論
第一章 利 潤
第一節 一般的利潤率の形成
第二節 市場価格と市場価値(市場生産価格)
第三節 一般的利潤率の低落の傾向
第二章 地 代
第三章 利 子
第一節 貸付資本と銀行資本
第二節 商業資本と商業利潤
第三節 それ自身に利子を生むものとしての資本
第四節 資本主義社会の階級性
解 説 (伊藤誠)
索 引
序 論
第一篇 流 通 論
第一章 商 品
第二章 貨 幣
第三章 資 本
第二篇 生産論
第一章 資本の生産過程
第一節 労働生産過程
第二節 価値形成増殖過程
第三節 資本家的生産方法の発展
第二章 資本の流通過程
第三章 資本の再生産過程
第一節 単純再生産
第二節 拡張再生産
第三節 社会総資本の再生産過程
第三篇 分 配 論
第一章 利 潤
第一節 一般的利潤率の形成
第二節 市場価格と市場価値(市場生産価格)
第三節 一般的利潤率の低落の傾向
第二章 地 代
第三章 利 子
第一節 貸付資本と銀行資本
第二節 商業資本と商業利潤
第三節 それ自身に利子を生むものとしての資本
第四節 資本主義社会の階級性
解 説 (伊藤誠)
索 引
書評情報
日本経済新聞 リーダー本棚 吉川 洋さん 2020年4月4日