クァジーモド全詩集
圧倒的な強さと深さと重みが胸をうつ,二〇世紀イタリアを代表するノーベル賞詩人クァジーモドのすべて.
著者 | クァジーモド 著 , 河島 英昭 訳 |
---|---|
通し番号 | 赤N702-1 |
ジャンル | 書籍 > 岩波文庫 > 赤(外国文学/南北ヨーロッパ・その他) |
刊行日 | 2017/07/14 |
ISBN | 9784003770214 |
Cコード | 0198 |
体裁 | 450頁 |
定価 | 1,177円 |
在庫 | 在庫あり |
1959年にノーベル文学賞を受賞した,20世紀イタリアを代表する詩人クァジーモド(1901―68)の全詩集.反ファシズム闘争に身を投じ,人間を蹂躙する現実への激しい怒りを表現し,戦後は冷戦や核の恐怖を見据えた強靭な社会詩を書き続けた詩人による,社会の悲惨,歴史の苦悩に対峙することばを,詩心あふれる名訳で!
第一詩集 『そしてすぐに日が暮れる』(一九二〇-四二年)
「水と土」 (一九二〇-二九年)
そしてすぐに日が暮れる
ティンダリを吹く風
天使たち
そしてあなたの衣裳は白い
樹木
白羊宮
死んだ水
土
日は傾き
宇宙
古代の冬
見知らぬものたちの苦しみ
季節の風が吹き過ぎるのを聞いた
死者たち
かつてこれほど明るい夜があなたを圧倒したことはなかった
あなたは一つの命を呼ぶ
爽やかな海辺
鏡
誰もいない
小路
貪欲にもぼくは手をひらく
帰郷
夜の小鳥たちの隠れ家
仲間さえぼくを見棄てる
ぼくのなかで失われていったすべての形が
「沈んだ木笛」(一九三〇-三二年)
沈んだ木笛
ユーカリの木
ぼくの土地で
歌の誕生
草のやすらぎ
古代の光の渦巻くなかを
言葉
花々のなかに倒れていた乙女の
小さな曲線の
ぼくのなかで埋葬された者が唄いだす
道連れ
ある修道士の聖像の嘆き
死の記憶も失せたころ
雨への祈り
秋
ローヤの河口
森は眠る
夜に
耐え忍ぶ一日を
骨壺のなかの聖者の変身
新たな無垢をとおってぼくに降りてきた
島
死者たちが目を見開いているところへ
ぼくに夜明けを与えよ
恢復期
天使
隠れた命
廻(めぐ)る星座と静けさとが
闇と高さで作られている
水は山鼠(やまね)たちを腐らせて
種
初めの日
緑に漂う
睡りの川に洗われて
雌雄同体の蚯蚓(みみず)
木立ちの苦しみの形
悪を育む
アルビスの日曜日のためにアーメン
「美神と魔王」 (一九三二-三六年)
美神(エーラト)に捧げる歌
魔王(アポツリオン)の歌
魔王(アポツリオン)
アーナポ川
死んだ青鷺
《白土(テッレ・ビアンケ)》の丘の上で
あなたの光に難破して
不眠症
沿岸には時おり
ユリシーズの島
冬の塩田
サルデーニャ島
空の光るなかに
石窟(ラトミーエ)
生身の匂いをたてながら
まさに人間的な瞬間に
異国の町
死の感覚のさなかで
神話の罪びと
「新詩篇」(一九三六-四二年)
鵲(かささぎ)が笑う、黒ぐろとオレンジの茂みに
アグリジェントの道
丘は優しく
何をしたいのだ、空の牧人よ?
イラーリア・デル・カッレットの石彫のまえで
いま、日が昇る
雨はすでにぼくらを取り囲み
ある晩、雪が
フォンターナ広場
空をゆく帆影
ランブロの川岸で
マージノの谷間の夕べ
舞踊家クマーニに捧げる悲歌(エレゴス)
デルポイの女
喜びの模倣
月と火山の馬
なおも緑の川が
聖(サント)アンティーオコの浜辺
早くも痩せた花は飛び去る
青春の始まり
第二詩集 『来る日も来る日も』(一九四二-四五年)
柳の枝に
便り
一九四四年一月十九日
雪
来る日も来る日も
おそらくは心が
冬の夜
ミラーノ、一九四三年八月
城壁
おおわたしの可愛い動物たちよ
おそらくは墓の上に書かれて
彷徨(さまよ)うわたしに
ベルガモ・アルタの砦から
アッダ川の辺(ほとり)で
またも海鳴りがする
悲歌
もう一人のラザロ
渡し場
あなたの足が音もなく
わたしの時代の人間
第三詩集 『この世は夢でない』(一九四六-四八年)
南を偲ぶ哀歌
ビーチェ・ドネッティに捧げる墓碑銘
対話
雨と鉄の色
恋歌(マドリガル)によせて
主の年一九四七
イタリアはわたしの国
不死の死
母への手紙
第四詩集 『萌えゆく緑と散りゆく緑』 (一九四九-五五年)
「萌えゆく緑と散りゆく緑」
死んだギター
死と戦う女
萌えゆく緑と散りゆく緑
遠い都会で
「シチリアから」
何と長い夜か
波打つ丘の彼方に
サラセンの塔の近くで、亡き弟のために
アグリジェントのゼウス神殿
「樹々が倒れて城壁が崩れ落ちたとき」
讃歌
ロレート広場の十五人へ
アウシュヴィッツ
チェルヴィ兄弟たちに、彼らのイタリアに
「警句詩」
ある敵の詩人に
黄金の網から
第五詩集 『比類なき土地』(一九五五-五八年)
「見えつ、隠れつ」
見えつ、隠れつ
比類なき土地
今日は三月二十一日
歪んだ自然から
開かれた弧
青銅の壺
父に
スカーラ家歴代墓廟(ぼびょう)
精神の身振りか名前か
「さらなる地獄について」
壁
この都会には
さらなる地獄について
三面記事
警句に似せて
兵士たちは夜に泣く
「ギリシアにて」
アクロポリスの丘の夜
ミュケーナイ
アルペイオスの流れを伝って
デルポイ
マラトーン
クノッソス宮殿のミーノタウロス
エレウシース
「問いと答え」
新しい月に
一つの答え
別の答え
第六詩集 『与えることと持つこと』(一九五九-六五年)
与えることと持つこと
ヴァルヴァーラ・アレクサンドローヴナ
ただ愛があなたを正しく撃ったとき
九月のある夜
イーザル川に沿って
バラトンの岸辺で
トルブリッジ
ハーレムの黒人教会
カリアクラ岬
沈黙はわたしを欺かない
グレンダルー
トスカーナ地方の石弓の射手
チスウィックの墓地で
メリダのマヤ族
スパイに贈る言葉
愛の詩篇
何ものも失わなかった
この島では
リグーリアに
感知できない時間
世界の均衡を保つには一日があればよい
花々は飾られているが夜更けには招き入れるポプラの樹々を
「碑文二篇」
マルツァボットに斃れた者たちへの碑文
ヴァレンツァのパルチザン兵士への碑文
詩について
詩人と政治家
訳 注
解 説
あとがき
『クァジーモド全詩集』編纂のために使用した文献
主要参考文献
年 譜
「水と土」 (一九二〇-二九年)
そしてすぐに日が暮れる
ティンダリを吹く風
天使たち
そしてあなたの衣裳は白い
樹木
白羊宮
死んだ水
土
日は傾き
宇宙
古代の冬
見知らぬものたちの苦しみ
季節の風が吹き過ぎるのを聞いた
死者たち
かつてこれほど明るい夜があなたを圧倒したことはなかった
あなたは一つの命を呼ぶ
爽やかな海辺
鏡
誰もいない
小路
貪欲にもぼくは手をひらく
帰郷
夜の小鳥たちの隠れ家
仲間さえぼくを見棄てる
ぼくのなかで失われていったすべての形が
「沈んだ木笛」(一九三〇-三二年)
沈んだ木笛
ユーカリの木
ぼくの土地で
歌の誕生
草のやすらぎ
古代の光の渦巻くなかを
言葉
花々のなかに倒れていた乙女の
小さな曲線の
ぼくのなかで埋葬された者が唄いだす
道連れ
ある修道士の聖像の嘆き
死の記憶も失せたころ
雨への祈り
秋
ローヤの河口
森は眠る
夜に
耐え忍ぶ一日を
骨壺のなかの聖者の変身
新たな無垢をとおってぼくに降りてきた
島
死者たちが目を見開いているところへ
ぼくに夜明けを与えよ
恢復期
天使
隠れた命
廻(めぐ)る星座と静けさとが
闇と高さで作られている
水は山鼠(やまね)たちを腐らせて
種
初めの日
緑に漂う
睡りの川に洗われて
雌雄同体の蚯蚓(みみず)
木立ちの苦しみの形
悪を育む
アルビスの日曜日のためにアーメン
「美神と魔王」 (一九三二-三六年)
美神(エーラト)に捧げる歌
魔王(アポツリオン)の歌
魔王(アポツリオン)
アーナポ川
死んだ青鷺
《白土(テッレ・ビアンケ)》の丘の上で
あなたの光に難破して
不眠症
沿岸には時おり
ユリシーズの島
冬の塩田
サルデーニャ島
空の光るなかに
石窟(ラトミーエ)
生身の匂いをたてながら
まさに人間的な瞬間に
異国の町
死の感覚のさなかで
神話の罪びと
「新詩篇」(一九三六-四二年)
鵲(かささぎ)が笑う、黒ぐろとオレンジの茂みに
アグリジェントの道
丘は優しく
何をしたいのだ、空の牧人よ?
イラーリア・デル・カッレットの石彫のまえで
いま、日が昇る
雨はすでにぼくらを取り囲み
ある晩、雪が
フォンターナ広場
空をゆく帆影
ランブロの川岸で
マージノの谷間の夕べ
舞踊家クマーニに捧げる悲歌(エレゴス)
デルポイの女
喜びの模倣
月と火山の馬
なおも緑の川が
聖(サント)アンティーオコの浜辺
早くも痩せた花は飛び去る
青春の始まり
第二詩集 『来る日も来る日も』(一九四二-四五年)
柳の枝に
便り
一九四四年一月十九日
雪
来る日も来る日も
おそらくは心が
冬の夜
ミラーノ、一九四三年八月
城壁
おおわたしの可愛い動物たちよ
おそらくは墓の上に書かれて
彷徨(さまよ)うわたしに
ベルガモ・アルタの砦から
アッダ川の辺(ほとり)で
またも海鳴りがする
悲歌
もう一人のラザロ
渡し場
あなたの足が音もなく
わたしの時代の人間
第三詩集 『この世は夢でない』(一九四六-四八年)
南を偲ぶ哀歌
ビーチェ・ドネッティに捧げる墓碑銘
対話
雨と鉄の色
恋歌(マドリガル)によせて
主の年一九四七
イタリアはわたしの国
不死の死
母への手紙
第四詩集 『萌えゆく緑と散りゆく緑』 (一九四九-五五年)
「萌えゆく緑と散りゆく緑」
死んだギター
死と戦う女
萌えゆく緑と散りゆく緑
遠い都会で
「シチリアから」
何と長い夜か
波打つ丘の彼方に
サラセンの塔の近くで、亡き弟のために
アグリジェントのゼウス神殿
「樹々が倒れて城壁が崩れ落ちたとき」
讃歌
ロレート広場の十五人へ
アウシュヴィッツ
チェルヴィ兄弟たちに、彼らのイタリアに
「警句詩」
ある敵の詩人に
黄金の網から
第五詩集 『比類なき土地』(一九五五-五八年)
「見えつ、隠れつ」
見えつ、隠れつ
比類なき土地
今日は三月二十一日
歪んだ自然から
開かれた弧
青銅の壺
父に
スカーラ家歴代墓廟(ぼびょう)
精神の身振りか名前か
「さらなる地獄について」
壁
この都会には
さらなる地獄について
三面記事
警句に似せて
兵士たちは夜に泣く
「ギリシアにて」
アクロポリスの丘の夜
ミュケーナイ
アルペイオスの流れを伝って
デルポイ
マラトーン
クノッソス宮殿のミーノタウロス
エレウシース
「問いと答え」
新しい月に
一つの答え
別の答え
第六詩集 『与えることと持つこと』(一九五九-六五年)
与えることと持つこと
ヴァルヴァーラ・アレクサンドローヴナ
ただ愛があなたを正しく撃ったとき
九月のある夜
イーザル川に沿って
バラトンの岸辺で
トルブリッジ
ハーレムの黒人教会
カリアクラ岬
沈黙はわたしを欺かない
グレンダルー
トスカーナ地方の石弓の射手
チスウィックの墓地で
メリダのマヤ族
スパイに贈る言葉
愛の詩篇
何ものも失わなかった
この島では
リグーリアに
感知できない時間
世界の均衡を保つには一日があればよい
花々は飾られているが夜更けには招き入れるポプラの樹々を
「碑文二篇」
マルツァボットに斃れた者たちへの碑文
ヴァレンツァのパルチザン兵士への碑文
詩について
詩人と政治家
訳 注
解 説
あとがき
『クァジーモド全詩集』編纂のために使用した文献
主要参考文献
年 譜