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タンパク質の一生

生命活動の舞台裏

生命維持も,遺伝や病気も,私たちの日々の営みは細胞世界で働き続けるタンパク質に支えられている!

タンパク質の一生
著者 永田 和宏
通し番号 新赤版 1139
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 自然科学
刊行日 2008/06/20
ISBN 9784004311393
Cコード 0245
体裁 新書 ・ 並製 ・ カバー ・ 234頁
在庫 在庫あり

ヒトの体には約60兆個の細胞があり,それぞれなんと80億個のタンパク質を持っているという.日頃意識はしなくとも,生命維持も,遺伝や病気も,私たちの日々の営みはほとんどがこのタンパク質に支えられている! 最先端の科学の現場から,細胞という極小宇宙で休みなく働きつづけている生命活動の主役たちの姿を伝える.

はじめに──細胞のなかの働き者、タンパク質

第一章 タンパク質の住む世界──細胞という小宇宙
 身近なタンパク質から/素材となる「アミノ酸」/一本の「ヒモ」/数え切れない種類のタンパク質/骨格も、酵素もタンパク質/仕事人、タンパク質/細胞生物学/細胞の条件/生体のヒエラルキー/動物も、植物も/細胞の構造/タンパク質を作る「小胞体」/ミトコンドリア/共生細菌がミトコンドリアに/細胞の進化/共生関係の成立/DNAとは何か/DNAの情報量/すべてはタンパク質のために

第二章 誕生──遺伝暗号を読み解く
 二重らせんモデルの衝撃/DNAの暗号から/セントラルドグマ/すぐれた情報保存システム/DNAの複製/DNAの糸を巻きとる/RNAの働き/RNAワールド/転写のプロセス/情報の翻訳単位、コドン/暗号の始点と終点/翻訳機械リボソーム/転移RNA(tRNA)/どれくらい時間がかかるか/試験管内翻訳装置

第三章 成長──細胞内の名脇役、分子シャペロン
 分子シャペロンの発見/折り畳んで形を作る/四つのヒエラルキー/親水性、疎水性/フォールディングの大原則/アンフィンゼンのドグマ/試験管の中、細胞の中/タンパク質の凝集/介添え役、分子シャペロン登場/熱ショックタンパク質からストレスタンパク質へ/ストレスタンパク質から分子シャペロンへ/大腸菌で働くシャペロン/ゆりかごの中でのフォールディング/ 「電気餅つき器」の仕組み/正しくフォールドするのはこんなに難しい/ストレスタンパク質/タンパク質の修理屋/ゆで卵が生卵に!/シャペロンの作動原理は三つ/脳虚血/ストレス耐性の獲得/移植手術への応用/がん治療とストレスタンパク質/温熱療法の実際/好熱菌のストレスタンパク質/生命を守るシステム/ストレス応答の仕組み

第四章 輸送──細胞内物流システム
  「輸送」の精巧なシステム/宛先の書き方──葉書方式と小包方式/タンパク質の輸送経路/リン脂質の「膜」/ 「チャネル」を作る膜タンパク質/シグナル仮説/翻訳共役輸送──針穴通しの名人芸/糖鎖の付加──タンパク質の化粧なおし/小胞体の中でのフォールディング/クリップどめ──ジスルフィド結合形成/細胞の「内なる外部」/ 「小包型」の荷札──宅配便の便利さ/貨物輸送のレールとモータータンパク質/細胞内交通の上りと下り/流通センター、ゴルジ体/ゴルジ体からの逆行輸送/外から内へ──エンドサイトーシス/インスリンの分泌/コラーゲンの合成/HSP47の発見/分子シャペロンと病気/ミトコンドリアへの輸送/中に引き込む爪歯車/出入り自在の核輸送/輸送インフラは生命維持の基盤

第五章 輪廻転生──生命維持のための「死」
 不老長寿の夢/タンパク質の寿命/入れ替わるタンパク質/日々生まれ変わる細胞/アミノ酸のリサイクル・システム/分解シグナルの名はPEST配列/細胞周期に必要なタンパク質分解/ 「時計の遺伝子」/ショウジョウバエの時間遺伝子/時刻合わせの装置/自分を食べて生き延びる?/選択的に分解するか、バルクで分解するか/ユビキチンは分解の目印/分解機械・プロテアソーム/すぐれものの「リング型分子機械」/大食漢・オートファジー/分解の安全装置/細胞の死/タンパク質の輪廻転生

第六章 タンパク質の品質管理──その破綻としての病態
  「品質管理」の必要性/リスク・マネージメント/工場の品質管理/細胞内の四段階の品質管理/不良品が生じる場合/第一の戦略──生産ラインのストップ/第二の戦略──修理工シャペロンの誘導による再生/第三の戦略──廃棄処分/第四の戦略──工場閉鎖/品質管理の「時間差攻撃」/品質管理の破綻としての病態/血友病/フォールディング異常病の発見/神経変性疾患/ 「赤い靴」の病/ポリグルタミン病発症のメカニズム/再生できない神経細胞/アルツハイマー病/さまざまな海綿状脳症/ヒトのプリオン病/伝播型プリオン/プリオンの感染力/BSEの脅威/プリオンと分子シャペロン/アルツハイマー病のメカニズム/新しい治療法に向けて

あとがき
永田和宏 (ながたかずひろ)
 1947年滋賀県に生まれる
 1971年京都大学理学部物理学科卒業.森永乳業中央研究所,米国国立癌研究所,京都大学胸部疾患研究所,再生医科学研究所を経て
 現在─京都産業大学総合生命科学部教授,京都大学名誉教授
 専攻─細胞生物学(元日本細胞生物学会会長)
 著書─『細胞生物学』(東京化学同人,共編著),『細胞生物学事典』(朝倉書店,共編著),『分子シャペロンによる細胞機能制御』(シュプリンガー・フェアラーク東京,共編著),『ストレス蛋白質─基礎と臨床』(中外医学社,編著)ほか
 歌人としての活躍も知られる.宮中歌会始詠進歌選者,朝日新聞歌壇選者.歌集に『華氏』(寺山修司短歌賞),『饗庭』(若山牧水賞,読売文学賞),『風位』(芸術選奨文部科学大臣賞,迢空賞),『後の日々』(斎藤茂吉短歌文学賞)など,また『近代秀歌』『現代秀歌』(岩波新書)など.

書評情報

日本経済新聞(朝刊) 2009年5月10日
信濃毎日新聞(朝刊) 2008年9月28日
朝日新聞(朝刊) 2008年7月20日

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