シリア情勢
終わらない人道危機
「今世紀最悪の人道危機」と言われるシリア内戦.なぜ,かくも凄惨な事態が生じたのか.複雑に入り組んだ中東の地政学を読み解く.
「今世紀最悪の人道危機」と言われ幾多の難民を生み出しているシリア内戦.「独裁」政権,「反体制派」,イスラーム国,そしてアメリカ,ロシア……様々な思惑が入り乱れるなか,シリアはいま「終わりの始まり」を迎えようとしている.なぜ,かくも凄惨な事態が生じたのか.複雑な中東の地政学をわかりやすく読み解く.
はじめに――終わらない「今世紀最悪の人道危機」
「終わりの始まり」/シリア内戦は「内戦」なのか
第1章 シリアをめぐる地政学
1 ハイジャックされた「民主化」――「政治化」、「軍事化」
「民主化」の挫折/低迷する「政治化」/混乱の主因となり得ない「軍事化」
2 主戦場とされたシリア――「国際問題化」
「人権」か「主権」か/「中東の活断層」としての利用価値/軍事的価値ゆえに欲せられるシリア/交錯する第一防衛線
3 だれが「悪」なのか――「アル= カーイダ化」
「軍事化」の背後で進んだ「アル= カーイダ化」/外国人戦闘員の潜入/暴力再生産をもたらす「正義」
第2章 「独裁政権」の素顔
1 アサド大統領への世襲
不意の後継者/二つの恐怖がもたらした「ジュムルーキーヤ」
2 アサド大統領はどのような統治をめざしたのか
「独裁政権」維持のための改革志向/宗派主義のまやかし
3 シリア内戦を受けたアサド政権の改革
政権交代なき体制転換/「真の権力装置」の活性化/「第三層」の台頭
第3章 「人権」からの逸脱
1 「今世紀最悪の人道危機」の被害実態
犠牲者統計に潜む政治的偏向/国外難民・国内避難民発生の主因
2 中途半端なシリアの友グループ
欧米諸国の躊躇の理由/担保されたイスラエルの安全保障
3 化 学兵器使用疑惑――シリア内戦の最初の「パラダイム転換」
情報戦の激化/及び腰の米英仏とロシアの「助け船」/有名無実化する「ゲーム・チェンジャー」
第4章 「反体制派」のスペクトラ
1 「反体制派」の同質性と異質性
ヌスラ戦線とイスラーム国/さまざまなイスラーム過激派/イスラーム過激派の同質性/イスラーム過激派と自由シリア軍の関係
2 ホワイト・ヘルメットとは何者か
シリアの友グループによる支援/「反体制派」との関係
3 アサド政権を支える外国人戦闘員
第5章 シリアの友グループの多重基準
1 軍事バランスの変化を模索
ジュネーブ合意とシリア国民連合をめぐる不協和音/「穏健な反体制派」への支援という口実/「反体制派」の対立とロジャヴァの台頭
2 迷走する「穏健な反体制派」支援
有志連合による空爆と解釈変更/マッチポンプ
3 トルコとサウジアラビアの結託
トルコにとっての「テロとの戦い」/結託の賜――ファトフ軍/「三つ巴の戦い」の幻想
第6章 真の「ゲーム・チェンジャー」
1 シリアの友グループの「テロとの戦い」が孕む限界
ロシアの空爆を促した二つの契機/テロの脅威になす術のない欧米諸国
2 ロシアの空爆
欧米諸国による虚しい空爆批判/ロシアの空爆に「寄生」する欧米諸国/ロジャヴァを軸とする奇妙な呉越同舟
3 実現不可能な停戦合意――ジュネーブ三会議
ISSGの合意/国連安保理決議第二二五四号採択
おわりに――シリア内戦の「終わりの始まり」とは
アル= カーイダが経験した「もう一つのヴァージョン・アップ」/オバマ政権による最後の致命的過ち/トルコとロシアの結託による米国の排除/「終わりの始まり」が意味する過酷な現実
主な文献・資料
表 「反体制派」による主な連合組織・合同作戦司令室
年 表
索 引
「終わりの始まり」/シリア内戦は「内戦」なのか
第1章 シリアをめぐる地政学
1 ハイジャックされた「民主化」――「政治化」、「軍事化」
「民主化」の挫折/低迷する「政治化」/混乱の主因となり得ない「軍事化」
2 主戦場とされたシリア――「国際問題化」
「人権」か「主権」か/「中東の活断層」としての利用価値/軍事的価値ゆえに欲せられるシリア/交錯する第一防衛線
3 だれが「悪」なのか――「アル= カーイダ化」
「軍事化」の背後で進んだ「アル= カーイダ化」/外国人戦闘員の潜入/暴力再生産をもたらす「正義」
第2章 「独裁政権」の素顔
1 アサド大統領への世襲
不意の後継者/二つの恐怖がもたらした「ジュムルーキーヤ」
2 アサド大統領はどのような統治をめざしたのか
「独裁政権」維持のための改革志向/宗派主義のまやかし
3 シリア内戦を受けたアサド政権の改革
政権交代なき体制転換/「真の権力装置」の活性化/「第三層」の台頭
第3章 「人権」からの逸脱
1 「今世紀最悪の人道危機」の被害実態
犠牲者統計に潜む政治的偏向/国外難民・国内避難民発生の主因
2 中途半端なシリアの友グループ
欧米諸国の躊躇の理由/担保されたイスラエルの安全保障
3 化 学兵器使用疑惑――シリア内戦の最初の「パラダイム転換」
情報戦の激化/及び腰の米英仏とロシアの「助け船」/有名無実化する「ゲーム・チェンジャー」
第4章 「反体制派」のスペクトラ
1 「反体制派」の同質性と異質性
ヌスラ戦線とイスラーム国/さまざまなイスラーム過激派/イスラーム過激派の同質性/イスラーム過激派と自由シリア軍の関係
2 ホワイト・ヘルメットとは何者か
シリアの友グループによる支援/「反体制派」との関係
3 アサド政権を支える外国人戦闘員
第5章 シリアの友グループの多重基準
1 軍事バランスの変化を模索
ジュネーブ合意とシリア国民連合をめぐる不協和音/「穏健な反体制派」への支援という口実/「反体制派」の対立とロジャヴァの台頭
2 迷走する「穏健な反体制派」支援
有志連合による空爆と解釈変更/マッチポンプ
3 トルコとサウジアラビアの結託
トルコにとっての「テロとの戦い」/結託の賜――ファトフ軍/「三つ巴の戦い」の幻想
第6章 真の「ゲーム・チェンジャー」
1 シリアの友グループの「テロとの戦い」が孕む限界
ロシアの空爆を促した二つの契機/テロの脅威になす術のない欧米諸国
2 ロシアの空爆
欧米諸国による虚しい空爆批判/ロシアの空爆に「寄生」する欧米諸国/ロジャヴァを軸とする奇妙な呉越同舟
3 実現不可能な停戦合意――ジュネーブ三会議
ISSGの合意/国連安保理決議第二二五四号採択
おわりに――シリア内戦の「終わりの始まり」とは
アル= カーイダが経験した「もう一つのヴァージョン・アップ」/オバマ政権による最後の致命的過ち/トルコとロシアの結託による米国の排除/「終わりの始まり」が意味する過酷な現実
主な文献・資料
表 「反体制派」による主な連合組織・合同作戦司令室
年 表
索 引
青山弘之(あおやま ひろゆき)
1968年,東京生まれ.東京外国語大学アラビア語学科卒業,一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学.ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員,JETRO アジア経済研究所研究員などを経て
現在―東京外国語大学総合国際学研究院教授
専攻―現代東アラブ政治,思想,歴史
著書―『混迷するシリア――歴史と政治構造から読み解く』『「アラブの心臓」に何が起きているのか――現代中東の実像』(編著)『現代シリア・レバノンの政治構造』(共著)『中東・中央アジア諸国における権力構造――したたかな国家・翻弄される社会』(共編著)(以上,岩波書店)
1968年,東京生まれ.東京外国語大学アラビア語学科卒業,一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学.ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員,JETRO アジア経済研究所研究員などを経て
現在―東京外国語大学総合国際学研究院教授
専攻―現代東アラブ政治,思想,歴史
著書―『混迷するシリア――歴史と政治構造から読み解く』『「アラブの心臓」に何が起きているのか――現代中東の実像』(編著)『現代シリア・レバノンの政治構造』(共著)『中東・中央アジア諸国における権力構造――したたかな国家・翻弄される社会』(共編著)(以上,岩波書店)
書評情報
東京新聞(朝刊) 2017年6月11日
週刊文春 2017年5月25日号
ふぇみん 2017年5月15日
日本経済新聞(朝刊) 2017年5月13日
日刊ゲンダイ 2017年5月9日
週刊文春 2017年5月25日号
ふぇみん 2017年5月15日
日本経済新聞(朝刊) 2017年5月13日
日刊ゲンダイ 2017年5月9日