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異端の時代

正統のかたちを求めて

世界に蔓延するポピュリズム.果たしてそれは民主主義の異端なのか? 「異端発生のメカニズム」を解明し,現代社会の深層に迫る.

異端の時代
著者 森本 あんり
通し番号 新赤版 1732
ジャンル 書籍 > 岩波新書 > 哲学・思想
刊行日 2018/08/21
ISBN 9784004317326
Cコード 0210
体裁 新書 ・ 262頁
在庫 在庫あり
なぜトランプは世界を席巻し続けるのか.蔓延するポピュリズムは民主主義の異端か,それとも正統と化したのか――.キリスト教史の展開,丸山眞男らの議論を精緻に辿り,「正統と異端」の力学から現代人のかくれた宗教性と,その陥穽を示す.神学者が十年来抱えたテーマがついに結実,混迷する世界を読み解く鍵がここにある.
序 章 正統の腐蝕――現代世界に共通の問いかけ
 1 変質する政党政治
 2 反知性主義の行方

第一章 「異端好み」の日本人――丸山眞男を読む
 1 「L正統」と「O正統」
 2 異なる価値秩序の併存
 3 日本的な「片隅異端」
 4 未完に終わった正統論

第二章 正典が正統を作るのか
 1 宗教学の諸前提
 2 書物になる前の聖書
 3 正典化の基準
 4 異端が正典を作る
 5 歴史の審判

第三章 教義が正統を定めるのか
 1 ハルナックの困惑
 2 正典から教義へ
 3 「どこでも,いつでも,誰にでも」
 4 根本教義なら正統を定義できるか
 5 始源も本質を定義しない
 6 「祈りの法」と「信仰の法」

第四章 聖職者たちが正統を担うのか
 1 「地の黙した人々」に聞く
 2 厳格な性倫理という誤解
 3 オリゲネスの後悔
 4 高貴なる異端
 5 凡俗なる正統

第五章 異端の分類学――発生のメカニズムを追う
 1 正統の存在論
 2 現代民主主義の酩酊
 3 異端発生のメカニズム
 4 分派・異端・異教

第六章 異端の熱力学――中世神学を手がかりに
 1 社会主義体制との比較
 2 ドナティストの潔癖
 3 秘跡論から見る正統
 4 丸山の誤解
 5 改革の熱情

第七章 形なきものに形を与える――正統の輪郭
 1 絵の本質は額縁にあり
 2 異端排斥文の定式
 3 制約による自由
 4 「複数可算名詞」としての自由
 5 正統の受肉

第八章 退屈な組織と煌めく個人――精神史の伏流
 1 個人の経験が判断の基準に
 2 自己表現の至高性
 3 普遍化する異端
 4 個人主義的宗教の煌めき
 5 反骨性のアイコン
 6 今日もっともありふれた宗教形態
 7 個人主義的宗教の特徴

終 章 今日の正統と異端のかたち
 1 民主主義とポピュリズム
 2 正統性を堪能する人びと
 3 信憑性構造としての正統
 4 真正の異端を求めて

引用文献/参考文献
あとがき
森本あんり
1956年神奈川県生まれ.プリンストン神学大学院博士課程修了(Ph.D.).
現在―国際基督教大学(ICU)学務副学長,同教授
専攻―神学・宗教学
著書―『ジョナサン・エドワーズ研究――アメリカ・ピューリタニズムの存在論と救済論』(創文社),『アメリカ・キリスト教史――理念によって建てられた国の軌跡』(新教出版社),『アメリカ的理念の身体――寛容と良心・政教分離・信教の自由をめぐる歴史的実験の軌跡』(創文社),『反知性主義――アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書),『宗教国家アメリカのふしぎな論理』(NHK出版新書)ほか

書評情報

読売新聞(朝刊) 2018年11月10日
朝日新聞(朝刊) 2018年10月6日
読売新聞(朝刊) 2018年9月23日
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