人間の條件 (上)

梶と美千子の物語がはじまる1943年の満洲.全ての愛と希望を押し流す戦争が迫る.戦後文学の一大記念碑.

人間の條件 (上)
著者 五味川 純平
通し番号 文芸87
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 文芸
日本十進分類 > 文学
刊行日 2005/01/18
ISBN 9784006020873
Cコード 0193
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 590頁
定価 1,650円
在庫 在庫あり
棉のような雪が静かに舞い降りる宵闇,1943年の満洲で梶と美千子の愛の物語がはじまる.植民地に生きる日本知識人の苦悶,良心と恐怖の葛藤,軍隊での暴力と屈辱,すべての愛と希望を濁流のように押し流す戦争……「魂の底揺れする迫力」と評された戦後文学の記念碑的傑作を敗戦60年を機に再び世に贈る.


■内容紹介
 棉のような雪が静かに舞い降りる宵闇,1943年の満洲で梶と美千子の愛の物語がはじまる.植民地に生きる日本知識人の苦悶,良心と恐怖の葛藤,軍隊での暴力と屈辱,すべての愛と希望を濁流のように押し流す戦争……「魂の底揺れする迫力」と評された『人間の條件』は,1956年7月から58年1月にかけて,三一書房より刊行され,400字3000枚,大ベストセラーとなった.
 全6部からなり,現代文庫では1巻に2部ずつ収録し全3巻とする.
 物語は1943年はじめから,45年冬まで,舞台は中国東北部満洲である.過去に左翼運動に参加,転向し,満洲の日本国策会社に勤める青年社員梶が,鉱山の労務管理に抜擢される.植民地実態分析を専攻したらしく,生産性向上のために,「満人」労務者との雇用関係の改善などを提案するが,労務者処刑に抗議したため,憲兵隊に逮捕され,召集免除の特典を剥奪される.折から「支那事変」は「大東亜戦争」へと拡大,梶は入営しても幹部候補生を志願せず,虐待を受ける日々,前線でソ連参戦を迎え撃ち,捕虜となる.脱走し,雪の広野を彷徨……主人公はややスーパーマンであり,作者の実体験を色濃く反映したらしく,物語は異様な迫力をもち,大長編ながら一気に読ませる.
 中国文学者竹内好氏は「これは重苦しい小説である.全6部,3000枚の長編のどこにも息をぬく場所がない.読みながら,いい加減にもうやめてくれ,と言いたくなるような小説である.けれども,どんなに重苦しくても,だれかが一度は書かなければならなかった.たまたまこの作者が代表してそれを書いた.作者のほかに,まだだれも書いていないと思うので,あえて代表とよぶ.作者は自分だけの内的衝動にしたがって書いているのだが,それがおのずと多数を代表する結果となっている……日本人の戦争体験は壮大であって,これだけに尽されるとは思わないが,……この小説が(戦争体験を描いた文学として)まっ先に指を屈すべき作品であることは疑いない」と書いている.
 映画(主演仲代達矢,新珠三千代.小林正樹監督),テレビ(主演加藤剛,藤由紀子)も好評であった.
五味川純平(ごみかわ じゅんぺい)
1916-95年.作家.中国大連に近い寒村に生まれる.1933年大連一中卒業.満鉄奨学資金給付生となり,東京商科大学予科入学するも,中退.東京外語学校英語部文科卒業.旧満洲の昭和製鋼所入社.43年召集され,ソ満国境を転戦,捕虜となり,48年帰国.作品『戦争と人間』『自由との契約』『歴史の実験』『ノモンハン』『虚構の大義 関東軍私記』『御前会議』ほか.

書評情報

SQUET 2015年1月号
朝日新聞(be) 2014年8月30日
朝日新聞(夕刊) 2014年8月4日
朝日新聞(朝刊) 2013年12月29日
朝日新聞(朝刊) 2012年8月12日
日本経済新聞(朝刊) 2012年5月27日
月刊BOSS 2011年11月号
日本経済新聞(夕刊) 2011年9月14日
朝日新聞(朝刊) 2011年7月31日
サンデー毎日 2011年5月8.15日号
NHK BS2「私の1冊 日本の100冊」 2008年11月28日放送
読売新聞(朝刊) 2007年10月26日
産経新聞(朝刊) 2005年11月27日
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