私の生きた証はどこにあるのか

大人のための人生論

私の人生にはどんな意味があったのか? 生きる意味,空虚感に悩む人々に旧約聖書の言葉などを引用しながら,悩みの解決法を提示.

私の生きた証はどこにあるのか
著者 H.S.クシュナー , 松宮 克昌
通し番号 社会304
ジャンル 書籍 > 岩波現代文庫 > 哲学・思想・宗教
刊行日 2017/02/16
ISBN 9784006033040
Cコード 0114
体裁 A6 ・ 並製 ・ カバー ・ 274頁
定価 1,254円
在庫 在庫あり

私がこれまでしてきたことには,どんな意味があったのだろうか? 人生後半にさしかかった人びとがしばしば襲われる,空虚感を埋める方法とは何だろうか.『なぜ私だけが苦しむのか』の著者が,旧約聖書の言葉などを引用しながら,真に充実した人生とは何かを問い直し,悩みを解決する方法を提示する.現代文庫オリジナル版

感謝の言葉
日本語版に寄せて

1章 人生でやり残したことはなかったか?
人生の根幹的な問い/成功に求めるもの、魂が求めるもの/現代人の不安と問い/精神療法と宗教が与えるもの/仕事の業績に支払う代償/本書の性格と目的/年齢と共に変化する人生に対する視座

2章 聖書のなかの最も危険な書
聖書の題目と人生の題目との不一致/聖書のなかの最も危険な書/誰が「コヘレトの言葉」を書いたか?/人生の年輪と共に書の理解が変わること/コヘレトの究極の問い「人生にはどんな意味があるのか」/時と共に忍び寄る不安/生きる究極の意xii味に人が飢え渇くとき/コヘレトが書を書いた意図とは?

3章 自分の利益だけを追い求める人間の孤独
生きる意味へのファウストの根幹的な問い/人生を競争と見なす生き方/命令と服従の垂直関係と愛の水平関係/偶像崇拝の罪/他者を必要とする人生、しない人生/人間関係をとらえるブーバーの二つの視点/力の神と愛と関わり合いの神の概念/神概念を進化させること/アルフレッド・ノーベルの後半生の生き方の選択/競争意識過剰の問題/団塊の世代が育った背景/熟年における焦燥感の危機/自己中心の生き方の代償/映画『カサブランカ』のリックに見る生き方

4章 あまりにひどく傷つけられて感じることができないとき
あべこべの価値観の世界/現世の喜びに背を向けること/楽しみは人生のデザートになり得ても、メイン料理にはなり得ない/受難者の役回りを演じる人/人は楽しみと苦しみの狭間に生きる/西欧文明の二つの基盤/ユダヤ人の宗教、ギリシャ人の宗教/私たちはアテネとエルサレム双方の申し子/二つの異なった価値観から生じる葛藤

5章 痛みを感じないこと、喜びを感じないこと
苦しみの受けとめ方の宗教による違い/苦痛への鎮痛剤の副作用/苦痛を回避するだけでは成長できない/離婚が子供に与える本当の後遺症/苦楽を分かち合わない結婚はもちこたえにくい/倦怠という病/感情の働きの成熟化と人間的成長

6章 「愚者の歩みは闇に」
現代の悪玉役/頭で理解すること、体験で知ること/優等生への警告/理性だけで理解できないこととは?/闇と不合理な世界が教えるもの/現代人が忘れたもう一つの言語/理性が働く世界、理性が及ばぬ世界/年輪と共に知り得る不合理の世界

7章 神を畏れる人とは?
人生の残り時間が少なくなることへの焦燥感/信じた神に見放されれば生きる足場を失う/恐怖や服従を強調する宗教/ピアジェによる児童の発達理論/子供の道徳観の発達と宗教意識の進化との類似性/高度な宗教は必ずしも従順を求めない/ある信仰者の未成熟性の一例/子供でいたい願望につけ入られる危険/真の宗教の果たす役割/「神を畏れることは知恵のはじまり」の意味/真の宗教が人に求めるもの/不安定な青少年期に統合された人格の達成を目指すこと/好ましい人間像とは

8章 喜んであなたのパンを食べるがよい
コヘレトの苦悩と真に伝えたかったこと/一つひとつの瞬間の連続こそ人生/奇跡についての神の戦略変更/ささやかな瞬間の積み重ねこそ偉大な成果/多忙のなかで見失うもの/自己実現が可能になる仕事に全力を尽くすこと/人は何のために働くのか?/より大きくなるために、より小さくなること/人間らしく生きること、それ自身が見返り

9章 私が死を恐れない理由
人が恐れる死とは?/「主の聖所」に立つ人とは?/人生はインスタントコーヒーのようなもの/熟年を迎えて見つめ直すこと/人生に不可欠なものとは?/親密かつ持続的な関係の必要性/「空の巣症候群」/楽しさだけが人生のパートナーではない/苦しみへの抵抗力の減退と自殺/痛みと共生し、痛みを乗り越える力を知ること/助言を与え、生産的に生きることとは?/人生は蓄積された宝物/人生に真の意味を与えてくれるもの

10章 答えられずに残された一つの問い
人生の最終的な意味に答えられるもの/神によって埋め込まれた道徳意識/ヨセフの物語が教えること/人間の魂はどのようにつくられているのか?/不可知論者は人間の善を説明できるか?/小さな行いの積み重ねが最終的な勝利をもたらす/個人の夢が挫折したとき見失ってはならないこと/神による評価は人による評価とは異なる/違いをもたらす生き方とは/仮庵祭が象徴するもの

訳者あとがき
H・S・クシュナー(Harold S. Kushner)
1935年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学、ユダヤ神学校、ヘブライ大学に学び、クラーク大学などにて教鞭をとる。ボストン郊外のイスラエル・テンプルの名誉ラビ。『なぜ私だけが苦しむのか』をはじめ、『主はわれらの牧者』『ユダヤ人の生き方』『モーセに学ぶ失意を克服する生き方』など著書多数。

松宮克昌(まつみや かつよし)
上智大学文学部卒。心理学専攻。外資系企業に勤務後、翻訳業に従事。訳書にクシュナーの作品をはじめ、M.パルディール『キリスト教とホロコースト』、J.コーンウエル『ヒトラーの科学者たち』など。

書評情報

みるとす 2017年4月号(No.151)
信濃毎日新聞 2017年3月19日
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